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韓流ドラマベートーベンウイルスSS

The end of the world

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「………… 」
「おい!聞いてるのか?
ま、そういう事だから頼むなっ!」
相変わらず脳天気な声で先に通話を切ったのは、カン・マエの高校時代からの【知り合い】ロンドンフィルの首席指揮者のチョン・ミョンファンである。
上海から始まった中国でのツアーを終えて、昨日ドイツに帰国したばかりのカン・マエは書斎のプロフェッサー・チェアーの背に全身を預けて、太い溜め息まじりに目を閉じた。
ミョンファンに対する、ふつふつと湧き上がる怒りで目の奥がじんじんする。
阿呆な【知り合い】が語った中身は突拍子もない内容で、しかもその話の中に己が紛れもなく存在感を置いている。
『う、、ん。お前に言ったらぶっ飛ばされそうな話なんだが、言っておかんとマズイかと思ってな。
お前、半月ずーっと中国だっただろ?
ツアー中に変な話をしても申し訳ないし、今日になってしまった。』
面と向かわずともカン・マエが眉根を寄せている気配が伝わったのか、ミョンファンはオドオドと言葉を切った。
『…前置きはいい。』
沈黙のあと、ミョンファンをうながすカン・マエの低音は地獄の底から湧き出す熱風の如く迫力満点で、穏やかならぬ苛立ちが混ざる。
『三週間前の事なんだけどさ、俺ニューヨークに客演に行ってたんだよね。
そこでバカンスをとってフロリダに遊びに来ていた指揮者フェリックス・ヤングに会ったんだ…奴は拠点にしてるウイーンに帰国直前で、ニューヨーク・フィルの公演を聴きに来ていたんだ。』
『アメリカの指揮者としては重鎮と云われている奴だな。
フィラデルフィア・フィルの桂冠指揮者か…』
『うん、来季はシュトゥットガルト放送交響楽団の首席に就任予定らしい。
それで… 』
口ごもるミョンファンをうながすでもなく、カン・マエは携帯を耳から離す。嫌な予感が彼の肩を通り抜け、部屋はちょうど良く暖まっているはずなのに、寒気が走った。
『変な奴だったよ、何となく噂は知ってはいたが[世界の終わりは必ずくる。聖書に隠された暗号やピラミッドに隠された秘密の数字を君は知っているか?破滅の時には太陽系の惑星が一直線に並ぶ"グランドクロス"が起こる。来るべき時に備えるためには終末預言に真摯に耳を傾けるべきだ。]
滔々と俺に説教するんだ…』
話の筋が全く読めないので、仕方なくカン・マエは我慢して聞いておく事にする。
『興味も無い事を、よく記憶してるな。
それで…奴は世界の終わりが来ると言いたかっただけか?新興宗教にかぶれてるとは聞いた事は無いが。』
カン・マエは皮肉のつもりで言ったのだが、カン・マエにしては辛辣さを和らげた口調にしのばせた毒は、ミョンファンには通じなかったようである。
カン・マエは眼鏡を長い人差し指で押し上げ、息を細くつく。
『奴が俺と膝を突き合わせて至近距離で話すものだから、変だと始めに気づいていれば、さっさと逃げる事もできたのだろうが、相手は大先輩だろ?そうも行かずに慌てたよ。
しかも、ホテルの最上階にある会員制のバーの奥にある個室の中ときてるしな。
そのうち、奴の手が俺の膝頭を撫で始め、あらぬ方向に伸びてくるものだから流石に奴の手を払ったんだ。
あくまでも優しくな。』
『……それは、、、』
『そうだ、彼はあちらの住人だよ。正しくはバイって言うのか?
俺が仕入れた話によると、奥方を亡くされたあとは若い指揮者を呼び出しては、権威を傘に喰いまくっているらしい。まあ奥方の存命中だって噂に登らなかっただけかもしれないがな。』
ますます話が怪しい方向に向いて行く予感に、頭がくらっとする。
カン・マエは携帯を持ったまま、頭痛を堪えるように左手を額にあてて目を閉じた。
『お前は逃げたんだろ?
だったら私とは関係は無いはずだ。』
『ああ…あんな爺さんに喰われるなんて真っ平だからな。
どんな可愛がり方をするのか興味深いが、俺の操はこれから出会う運命の人に捧げると決めてるから相手をするわけにはいかないよ。』
ククッとのど元で嗤うと、ミョンファンは冗談混じりにかえし、直ぐに言葉を継いだ。
『それでさあ、その翌日も呼び出されちゃって困ったよ。エラい人に逆らうといい事なんてないからな。
お前みたいな権威に負けない度胸は俺は持ってないし。
…どうしても駄目か?としつこく言うから俺、お前と愛し合ってるから申し訳ないがお相手は出来ません。と答えちゃったんだよ。
ほら、相手はバイだろ?ストレートだって言ってもきっぱりとは固辞は出来ないからさ。』
ミョンファンのかえしを聞いた途端、カン・マエは驚きに目を見開き、組んでいた足をおろす。
相変わらず人を喰ったような口調で話すミョンファンに、怒りが滾ってくるものの、いちいち反応するのも腹が立つ。
『意味が分からん。お前には弟子が各国にいるのではなかったか?
そいつらの名前を出せばいいのに、どうして私の名前を出した!』
『そう怒るなよ…その時は俺も混乱してて、お前の名前が咄嗟に口を突いて出てしまったんだ。
俺とマエストロ・カンは二十年前から心から愛し合っているが、マエストロ・カンには奥方がいて秘密の関係だ。誰にも言わないでくれ。ーーと涙ながらに言ったら納得してくれたよ。
嘘の涙を見破れなかった爺さんの負けさ。
嘘の俺とお前の関係は、計らずも奴の身上と似た状況だったようだ。
爺さんも口外はしないと思うが、同じドイツの楽団で首席に就任するとなれば、お前も挨拶ぐらいはする事になる。今回の顛末を知らせておかないとマズイかと電話したわけだ。』
カン・マエは、左の人差し指で机を苛立つままに叩く。
電話が切れたあと、彼は降って湧いた怒りの矛先を探せぬままに、見たくもないネットサーフィンをしていた。
【来るべき世界の終わり】
確たる証拠もない、様々な預言に振り回される愚かな人間が、どの時代にもいることがネットには様々にアップされていた。
カン・マエは書斎のボードからウイスキーとカットグラスを取り出す。
まだ日は高いがアルコールでも呷らなければ、苛立ちから抜け出せそうになかった。
ノックの音がして、愛妻のルミが微かなスリッパが床に擦れる音をさせて入ってきた。
彼女のふっくらと丸みを帯びてきたお腹にはカン・マエの子どもがいる。この子が産まれるのは四ヶ月ほど先であるーーー
「あら、貴方お酒?昼間から呑むなんて珍しい~」
ルミは午後三時、、、休日には書斎にいる夫に運ぶことがならいとなっている…エスプレッソをデスクの上に置くと目元を柔らかく緩ませた。
夫の機嫌がすこぶるよろしくないことを、彼の唇の歪み加減で見てとり静かに踵をかえした愛妻の背中に、カン・マエは声をかける。
「ルミ、ここに座れ。」
書斎の大きな窓からの陽射しが当たる位置にある三人掛けのソファーに妻をうながすと、妻の背中に右手を回して座らせる。
「ルミ…世界の終わりの日が来るとしたら、お前は何をしたい?」
夫の質問の意図を計りかね細い首を傾げたルミを見ながら、カン・マエはエスプレッソを一口飲む。
冷め始めたエスプレッソの苦味に先ほどからの苛立ちのような不快感を覚えて、カン・マエは顔を顰めた。
「最後の日だ。あと数時間ですべてが無になるとしたら…だ、、、なにがしたい?」
ルミは暫く考え、アリアを歌うように話し出す。
うっとりと微笑みを浮かべて語る妻の横顔には不安の色は欠片もない。
これも彼女に宿る命がもたらした安寧のせいか・・・
カン・マエはルミの額から形の良い鼻の稜線、艶めく桜色の唇を視線で辿りながら考える。
「最後の日…か。そうですね~
ピエール・エルメのマカロンとウイーンのホテル・ザッハーのザッハートルテ、ユーハイムの焼きたてバウムクーヘンをお腹いっぱい食べるの。
お腹いっぱいになって眠ってる間に、世界の終わりが来る…っていうのがいいな~ 」
妻となり、やがて母になろうとしている今も、変わらぬ無邪気をたたえる瞳をくるりと丸くさせて、ルミは夫の顔を見る。
「… お前は最後の最後まで食い気しかないのか?
お前らしい・・・」
「 先生は?
先生はベートーヴェンの交響曲を聴きながら、赤ワインのグラスを持ってそう。
私のお菓子でお腹いっぱい、お昼寝よりずーっと大人ですね!
あ、あとね~エリザベート妃が大好きだったスミレの花の砂糖漬けも食べたいな。
先生が側に居てくれて、最後まで離れないの。
食べ過ぎると肥るぞ、って何時ものように呆れた顔で言ってくれて。」
終末の日を語っているのにルミの顔は穏やかで、まるで未来の絵を描いているようだった。
結婚式の日…パリのホテルの部屋で彼女が食べていたマカロン
初めて彼のウイーンの自宅に来た時…二人て行ったホテル・ザッハーのカフェで彼女が夢中で食べていたザッハートルテ、
お腹に我が子が宿ったとき…悪阻の間に唯一 口にする事が出来たバウムクーヘン。
すべて、彼女にとって自分と過ごした時間にまつわる…思い出深いスイーツばかりだったーーー
「ザッハートルテ…か。
子供が産まれたら忙しいらしいから、今度ウイーンに戻った時にでも食いに行くか?」
嬉しそうにカン・マエの腕にしがみついたルミの、以前より柔らかく丸みを帯びた感触が彼の気持ちをフラットに戻していったーーー
Fin.
あとがき
この世の終わりーー
ノストラダムスの大予言が代表的な、終末思想ですね。
よくこの世の終わりの日に何が食べたいか?というネタで会話したりしますが、我が家のカン・マエはどうなのかな~ ルミちゃんが側に居ればなんでもイイかも(笑)
ミョンファン先生の阿呆な発言を聞かされなければ、世界の終末なんて考えもしなかっただろうカン・マエが気持ちをかき乱されます。
カン・マエの問いに柔らか~く応えるルミちゃんの中には、この世の終わりは無いんですよね。
だって、やがて産まれてくる愛する先生との赤ちゃんが未来を向かせているから。過去へのベクトルが動く事は無いのです。
久々にがっつりカンルミが書きたくなって、ずっと頭にあった筋立てをまとめてみました。
お読みになる皆様はご存知だとおもいますが、(笑)
ミョンファン先生の言う、ストレートは普通の女性だけを愛する人、バイは男も女も愛せる人のことです。
ミョンファン先生を誘惑?した大御所指揮者さんは六十代後半の、ミョンファン先生からしたら大先輩。
アジア人指揮者はあちらの世界の方々にも大人気!ということで。
フェリックスさんとしては、スリムなミョンファン先生はネコってとこかな~(注・動物のネコではありません)
それでは、お読みいただきましてありがとうございました(^。^)
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