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韓流ドラマベートーベンウイルスSS

アンダンテ ・カンタービレ

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今年のラストSSは、パラレルストーリー。
中学生のトゥ・ルミが、カン・マエと実は会っていたという、無理な設定ですが、よろしくお願いします。
~アンダンテ・カンタービレ~
「できません。」
公演30分前、意思の強そうな唇を曲げ、彼の前で土下座する 人の良さそうな公演スタッフを三白眼を険しくして見下ろしているのは、若き指揮者マエストロ・カン・ゴヌだ。
観客が待っている、と哀願するスタッフとの押し問答の末、彼は言い放った。
「演奏する曲が誰の曲か知っていますか?ブラームスです。私が死んで天国に行ったら彼がいるんですよ。私は彼に会わせる顔がありません。私はブラームスに申し訳なくて指揮などできません。」
公演会場を出て行こうとする彼の背中に、スタッフが必死に声を張る。
「マエストロ!それは今日の公演の意味を知っておいでの行動ですか?
大統領夫妻をお迎えしているんです。
このまま あなたが指揮をやめたら音楽界から追放されますよ‼」
だからなんだと言うのだ・・・あれで韓国一のソウル市響?笑わせるな!
あんな無様な仕上がりではブラームスのシンフォニーを汚すだけだ。
「地獄に堕ちろ、この野郎!」
「代わりはいません!マエストロ戻って下さい‼」
スタッフの罵声と嘆願の声を背に、彼は会場を後にしたのだった。

彼は繁華街の中ほどにある公演会場を出て、行き先を決めずに速足で歩いていた。
若くして故国を離れ、欧州で過ごしてきた彼が韓国に訪れるのは10年ぶりだったーーー
街の景色はほとんど変わっていない。滑稽な横文字の看板が、彼に時代の変化を感じさせる程度のものだ。
街角の屋台の放つ料理の匂いが、彼に郷愁を煽ることもなかった。
彼には故国で待つ懐かしい人も、気持ちに蘇えらせて慰められるような追憶もない。
ただ自分が10年前まで此所にいたーーーそれだけの事だ・・・
休日ということもあり、繁華街の道は人で溢れかえっていた。彼は道の端でうずくまっている少女らしい影が目に入り、訝し気にサングラスの下の三白眼を凝らし、、、、結局、無意識に足を止めていた。
彼女の姿など見えていないように、足早くひっきりなしに通り過ぎる人の姿の間に、少女の横顔がちらちらと見えた。
【気分でも悪いのか?・・・ならば、、】
彼は咄嗟に浮かんだ、自分らしくないウェットな考えにざわめいた胸元に手を当てる。
これも韓国に来てしまったせいか…
仕事は踏んだり蹴ったり、その上お前は面倒なことに首を突っ込むのか?
誰かが声を掛けるだろう…彼は暫く彼女の小さな背中に目線を向けていたが結局 自問自答の末、 道を横切り彼女の数歩前に佇んでいた。
彼が近づく気配に気付かないまま数分間が流れ、少女は彼の視線にやっと気付いて透けるように色の白い貌を上げた・・・
彼女は黒いサングラスをかけた…強面の男性の視線に怯えるように、肩をすぼめた。
きまりわるそうに目線を手元のヴァイオリンケースに戻すと、年に似合わぬ複雑な表情でケースを撫でている。
【ヴァイオリンケース?】
具合が悪かったのではない、と確認したら さっさと去るつもりだった彼は、彼女から目を離せなかった。
職業柄ゆえヴァイオリンケースが気になっても仕方ないのだが、それよりも初めて目が合った時に彼女の綺麗な鳶色の瞳に吸い寄せられてしまったのだ。
【あの瞳…どこかで見たような気がする…】
やがて再び、彼女は彼の方に目を向けた。
最初に目があった時と違って、不思議そうな目でこちらを見ている。
おかしな娘だ・・・彼は肩をすくめ、そっと視線を逸らした。
【やれやれ…俺はなにをしているのやら…】
そう考えたとたん、こめかみにズキズキと痛みがきた。
小さく息を吐き、彼は思い切って足を踏み出したーーー
「大丈夫か。それは君のヴァイオリン?」
自分の肩に近くひざまずいて、サングラスを優雅な手つきで外しながら語りかける…見かけとは違う穏やかな低い声に、紺色の制服姿の少女は安心したように無邪気な声で応えた。
彼女が頷いた瞬き、ゆるい三つ編みの栗色の髪がふわりと揺れた・・・
収まったはずのざわめきが彼の胸中をまた、、、揺らした。
「はい、私のヴァイオリンです。
私は藝術高校を受験するために月に一度ソウルにレッスンに来ているんです。
人混みに押されて、肩に掛けていたヴァイオリンのケースを落としてしまったの。
高いところから落としてしまったから、壊してしまったかと心配で…
でも中を見て確かめる勇気がないの。
母が私のために、楽ではない生活をしているのに買ってくれたばかりのヴァイオリンなんです。」
「そうだったのか… 」
彼は彼女が大事そうに抱えるヴァイオリンケースに指を触れ、今にも零れそうに涙をためている少女に深く頷いた。
「見せてくれるか?
私はヴァイオリンの専門ではないが、壊れているかどうかは分かる。」
彼は少女の差し出したケースの蓋をあけ、艶やかに光るヴァイオリンを手にとる。
彼の目がまずボディ全体に真剣に注がれ、彼の指先は『彼女の』底部のアジャスタ、弦を支える駒、弦のまっすぐに走るネック…てっぺんのスクロールの順に丁寧に触れていく。
最後にボディ全体に手のひらを当て、彼はほーっと息をついた・・・
目を上げると、息を詰めて彼の手元を見つめている彼女に、目を合わせて大きく頷いた・・・
「どうした?深呼吸しろ。
君のヴァイオリンは無事だ、表だけ見ただけだが 傷ひとつ無いぞ。
音を聞きたい、なにか少し弾いてくれるか?」
「はい、でも…下手くそだから・・・」
うつむく少女にマエストロは凛とした声音で促した。
「中が壊れてないか確かめるためだ、少しでいいから。」
目を閉じて耳を澄ます彼に、アンダンテ・カンタービレの美しいメロディーが届いた・・・
「うん、内部も大丈夫なようだ。良かったな。」
彼は 一分ほど音色をチェックし、手の動きで演奏を止めた。
「壊れてなくてよかったー
… えっ、と、先生が来てくれて助かりました。私、不安で動けなかったんです。
ありがとうございました!」
少女は目の前の人物の呼び方に迷ったが、一番呼びやすい『先生』に決めたらしい。
彼は弓を置くや、飛びついてきた美少女を軽く押すように離した。
【それでは、中学生らしい少女に『先生』らしく話そうか…】
非日常極まる…この状況が為せたのか、それとも彼女の下手くそなモーツァルトのおかげか…いい気晴らしになったようで、彼の気鬱はかなり薄くなっていた。
若きマエストロに投げられた、スタッフやベテラン団員が時に嫌味を込めて彼を呼ぶ『先生』という呼びかけも、見知らぬ少女が口にすると心地よく彼に響く。
「君は受験生か、頑張りたまえ。
ところでレッスンは終わったのか?間に合うなら急がないと。
月に一度の大事なレッスンなんだろう?」
「あっ、、、わあっ、、そうでした。
急がなきゃ……
先生、ありがとうございました!」
腕時計を覗いた彼女は、チェック柄のリュックを慌てて背負いペコリと頭を下げると、お下げ髪を揺らしながら駆け足で彼の前から去って行ったーーー
とーー彼の耳にスニーカーのバタバタした足音が近づいて、戻ってきた少女が目の前にいた。
「先生、私、オーケストラで演奏するのが夢なんです。聴くひとを幸せにするような音楽をしたいの。
頑張ります、今日はありがとうございました!」
彼は肩に掛けたヴァイオリンケースがやけに大きく見える後姿に、ふっ、と片頬だけを微かに緩めたのだった。
【慌てて走ると、またケースを落とすぞ…落ち着いて歩いて行け】
彼女に言えなかった言葉を、彼は彼女の背中に心中で呟いた・・・
演奏会の会場を出る時は昂っていた気持ちが落ち着くと、投げつけられた「地獄に堕ちろ!」という声を思い出して逆に闘争心が湧いてきた。
【本当の地獄を知らない奴が…私にこの野郎などと…
聴くひとを幸せにするような音楽…か・・・】
マエストロ・カン・ゴヌは鞄を持つと、左腕を曲げ…特徴のある姿勢のいい大股で演奏会会場の方向に歩き出した。
40分遅れではあったが演奏会は無事に始まった。
結局、マエストロは途中でタクトを下ろす結果になったが・・・
『私はこれ以上ブラームスを、こんな演奏で汚すことはできません。皆さん、家に帰ったらシャワーでしっかり耳の垢を落としてください。』
ざわめく会場で言い放ったマエストロは、10年後 ソクラン市のプロジェクトオーケストラの指揮者、音楽監督として招聘されるまで故国の地を踏む事はなかった・・・
彼をプロの演奏家でも容赦なく斬り捨てるオーケストラ・キラーとはつゆ知らず、呼び寄せた人物は、かの少女トゥ・ルミだったーーー

2014年1月1日ーーー
マエストロ・カン・ゴヌの自宅では彼女…トゥ・ルミが窓からオリンピックパークの新年を祝う花火に目を輝かせていた。
二人の間に生まれた娘、サランはすでに夢の中である。
「ねえ先生、花火が綺麗よ…」
「……… 」
「先生! 」
「…聞こえてるぞ、だからなんだ?」
「だから~ 一緒に観ましょうよ!」
「……… ああ、、、」
「もういいです!生返事もいらないですからっ。」
ソファでブランデーグラスを傾けていたマエストロは、妻を焦らすだけ焦らすと にやりと口角を緩め、グラスをテーブルに置いて立ち上がった・・・
足音の静かな大股の歩みで、窓際に近づいていく・・・
ルミは背中越しに彼を感じて振りかえり… 彼の左手が彼女の顎をぐいとつかむや、彼女の唇はブランデーの香りのそれに塞がれた・・・
さまざまな経緯を経て、今や彼の妻となっているルミは、慌てて上がっていたせいか かの時の記憶もあやふやになり、彼女のヴァイオリンに長い指を触れたのが、当時オーケストラ・キラーと恐れられたマエストロ・カンとは、夢にも思ってはいなかったーーー
CDチェンジャーがカチリと音を立て、モーツアルトのヴァイオリン協奏曲第四番が始まり…第二楽章…アンダンテ・カンタービレが流れ始めた・・・
「懐かしいな・・・ 」
マエストロはくちづけの間に低く呟く・・・
「……珍しい、、先生が懐かしいなんて。過去の話は嫌いなんじゃなかった?」
少女のような線の細い身体の中で、そこだけ女らしいラインが見える首から肩の線に唇をあてると、耐えきれずにルミは甘くねっとりした息をもらした・・・
「……例外もある、、、」
夫はぼそりと言うと妻の腰にまわした腕に力を込める・・・
【おまえについては…だ。】
ラストの花火が華やかに上がり、二人は黙って窓越しの光の華を眺めた。
「今年もいい年になるといいね~」
「ああ… そうだな、、、」
「先生…愛してる、、このまま連れて行って・・・」
妻の甘やかな声音に応え、マエストロ・カンは彼の最愛を抱き上げ…立ち止まったまま、二人は唇を交わした・・・
夫の首に細い腕を柔らかく巻きつけ、彼を斜めに見上げる妻の潤んだ瞳に、窓から射し込む半月の光がキラリと映ったーーー
Fin.
あとがき
ラストなので少しだけですが甘くしてみました。思いついて二人に早いですが新年も迎えてもらいました。楽しんでいただけたでしょうか?
発想の原点は、第一話のカンマエ先生とリトルのエピソードを観ていて、もし先生とルミちゃんが何らかの形で会っていたら…というモノです(汗)
そうなるとドラマの筋だてからは大幅に外れてしまうので、この話は私の妄想の産物で、まるっきりのパラレルストーリーです。
カン・マエらしくないところも多々ありますが、ストーリー上の理由で少し優しすぎるカン・マエになっております。
第一話のコワモテ カン・マエとはかけ離れているので、大変申し訳ありません(滝汗)
私の妄想エピソードにおいては、このヴァイオリンなんちゃらの話は、カン・マエは覚えていてルミちゃんはすっかり忘れている、という事になっております。
今回のみのパラレルエピソードですので、我が拙作の他のストーリーとは切り離してお読みいただければと思います。
ドラマの第一話に出てくるカンマエ先生の印象的な台詞を少しだけ変えて使わせていただきました。
著作権などなどの絡みがありますので、なるべく言い回しは変えました。
まあ、今更感は否めないんですけれどね(^^;; ドラマ中の印象的なエピソードはもれなく使わせていただいております。
SSの題に使った、アンダンテ・カンタービレは音楽用語で、『歌うようにゆるやかに』という意味です。
文中に出てくる、モーツアルトのヴァイオリン協奏曲第四番の第二楽章から付けました。
カン・マエにモーツアルトは似合いそうもありませんが、ルミちゃんが弾くには雰囲気が合っていると思って選んだ曲です。
有名曲なので、調べたところYouTubeにもたくさんアップされておりました。宜しければ好きなアーティストの演奏で聴いてみてください。
本年度は、我が家にご訪問いただきましてありがとうございました。
来年は『やり残し』をまず仕上げる事から始めます。
拙作ではありますが、宜しければまた我が家に暇つぶしにいらしてください。
寒波が日本各地を冷凍庫みたいにしてますね~ 私も朝寒さで目が覚めます。
お風邪など召されませんよう、気をつけて元気に新年をお迎えください。
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