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韓流ドラマベートーベンウイルスSS

Little lovers(15)

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朝七時、トヤマとパオラはチェスキー・クルムロフ城にほど近いホテルを出て昨夜ライトアップされた城を眺めたプラスティー橋に向かっていた。
「ねえ~ヒデ、わざわざ早起きして街を眺めに行かなくても、ホテルの窓からお城が見えたのに~」
朝の苦手なパオラは少々ご機嫌ナナメである。
確かに彼等の泊まったホテルの窓からは、窓の下に流れるヴルタヴァ川(モルダウ川)と城が一望できる。
「はいはい、低血圧のお姫様。
朝の景色はまた格別だぞ!少し歩いてからの朝食は上手いからな。」
口を尖らせてトヤマに手を引かれているパオラはファンデーションとグロスを施しただけで殆ど化粧っ気もない。
トヤマは昨夜、彼の腕の中で妖しく乱れた姿とはまるで別人のように少女じみた貌を見せるパオラを、《素顔も可愛いな…》と口には出さずに微笑みかける。
街の中心に位置するフラデークの塔と並んで街を眺めるには絶好のポイントである…昨夜も訪れたプラスティー橋の中ほどまで歩いた。
二人は白亜の壁とオレンジ色の屋根が可愛らしい家々が宝石箱のように建ち並ぶ街並みを眺める。
「わあ~ 凄い!小さい時に読んだ絵本の中の街みたい。」
晴天の空に向かって伸びをしたスウェット姿のパオラは、やっと目がさめてきたのか興奮した様子で瞳を輝かせる。
トヤマは口角を上げ腕時計に目を落とすと、後ろから来た団体客から守るようにパオラの肩に手をそっとまわした。
「朝の散歩は格別だっただろう?
人々は この景色の美しさに感嘆して、俺たちが今 目にしている街並みを〈眠れる森の美女〉と呼んだそうだ。
中世からの雰囲気が残ってるのは、この街の悲しい歴史も関係しているんだよ。
19世紀まで隆盛を誇っていたこの街も、20世紀に入るとヨーロッパを席巻した産業革命の波に洗われてボヘミア山中のここは、都市としての発展を見込めないと見なされ打ち捨てられてしまった。
しかし廃墟同然になったお陰で、工業化による改築や戦争による被害を免れ、中世の時代そのままの姿を今に伝える事が出来たんだ。」
「眠れる森の美女ですか… 小さい頃読んでもらっ、、、、」
パオラは不自然に言葉を切り、瞳を隠すようにくるりと身体を反転させる。
「… ごめんなさい、、、 」
パオラの声が掠れて、早朝の空気に吸い込まれていった。
トヤマは 大またの数歩を刻むとパオラに向かい合う・・・
「どうしたんだ…?」
パオラは考えこむ表情を浮かべたあと小さく首を振り、斜め加減に俯く。
蒼ざめた表情から察したのか、トヤマはパオラの頭頂にさりげなく手を触れ重い口を開いた。
唇が乾き切ってザラついた、抑揚のない声が出てしまう。
自分が本当に言いたい事を、誰かに伝えたいと願えるようになったのは、思えば彼女との出逢いがあったからか・・・

「気を遣いすぎだ、パオラ。
俺にだって、たぶん母の膝で絵本を読んでもらった経験はあった。よく覚えていないだけの事だよ。
思い出せるように、今度は君の膝枕で君が本を読む声が聴きたい。
俺の願いを叶えてくれる?」

トヤマは 彼の問いかけに「…はい、、」とひとこと小さく応え、ようやく頬をほころばせたパオラの柔らかい唇に、素早く自分の唇を重ねるーーー
「お腹すかないか?
俺はペコペコだ、、昨夜は誰かさんのせいで運動しすぎたからな。」

瞬きの口づけはパオラの涙の味がしたーーー

トヤマはぽっと顔を赤らめたパオラに例の邪気の無さ過ぎる笑顔を向けると、ひとまわり小さな手をとってホテルの方向に歩き出した。

ーー大丈夫…貴方には私がずっと側にいるから。
パオラはトヤマに手を引かれながら、彼の背中に心の中で呼びかけたのだった。

*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

「ルカ… バイオレット!ご飯よ‼ 」

アッカーマン夫人はバイオレットの様子の変化に気付いて顔を引き締めた。
昨夜から落ち着きなく歩き回り変だとは思っていた。
彼女はリビングの壁を単なる爪とぎ…と言うより、苦しげに身体を小刻みに動かしながらガリガリと引っ掻いている。
ルカもそんなバイオレットから付かず離れずの位置にいて、夫人が呼んでも来ようとしない。
「バイオレット… 産気づいたのかしら。」
部屋の隅にはバイオレットがお産を出来るように、柔らかいタオルを折り重ねて出産場所を設けてある。

「バイオレット頑張るのよ、、、
ルカも私もついているからね!」

いつもは人に触られるのを好まず、触れた途端に噛むか引っ掻いてくるバイオレットは碧い瞳を潤ませておとなしく背中を撫でる夫人の手を受け入れる。
細かに震えているバイオレットの身体から、彼女の苦しさが伝わってきて、夫人は目を潤ませた。
「お医者様に連絡しなくてはね…

パオラには、、、チェコから直ぐには戻れないわよね。産まれてからで構わないかな・・・」
夫人は独り言ちて、自分を落ち着かせるようにコーヒーを飲み込んだーーー

*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

二人はホテルのテラスで朝食を摂り、城のガイド・ツアーに参加していた。
パオラは先ほどのスウェットから彼女の美しい身体のラインをうかがわせる、彼女のブロンドが映える菫(すみれ)色のウール地のフレアワンピースを着ていた。トヤマは万年変わらぬ、黒のスーツ姿である。
城内ガイドツアーの最後の部屋、マスカルニ・ザール…仮面舞踏会の間に着くと、トヤマはパオラに向き直り口を開いた。
「 意外と小さい部屋なんだな・・・
ここはチェスキー・クロムロフ音楽祭の時にコンサート会場になる部屋なんだよ。
ここに来てみたいと思ったのは、この部屋を自分の目で見たかったからなんだ。
いつか…音楽祭で弾いてみたい。
この部屋でピアノはどんな音を響かせるんだろうな。」

ツアーの終了とともに、観光客は帰路を歩き始め二人も列に続いた。
「ねえヒデ… 」
「… どうした?ニコニコして。」
「ヒデって、音楽の話になると少年みたいにキラキラ目を輝かせるのね。
お亡くなりになったヒデのお祖母様のおかげ?お祖母様は貴方に終生変わらない慰めを与えてくれたのかしら?」
「ああ…そう思う。
ピアノを弾くわけでも、コンサートに足を運ぶでもない生活をしている人だったが、家に一歩入るといつもクラシックの美しい調べが部屋に流れていた。特にシューベルトの歌曲が大好きでよく口ずさみながら家事をしていたな。」
「… そうなんですか、、、
ヒデはシューベルト好き?」
少し考え、トヤマはぽつりともらす…

「いいや… 特に歌曲は、、、
なんでか胸が塞がれる気がしてね。
自分からは弾こうと思った事はない。」
「日本に戻ってからイタリアが恋しくならなかった?イタリアのカルボナーラが食べたい!とか。」
祖母の話に及ぶと湿度のこもった声になるトヤマの気分を変えようと、パオラは務めて無邪気な声をかけた。

パオラの声の調子にトヤマの精悍な貌に大きな笑みが浮かび、笑みが浮かぶ際に出来る目のまわりの、彼を人懐こく見せるシワが深くみえた。
「俺はカッコよく君を守る騎士(ナイト)でいたかったが、逆だな。
君の方が、遥かに大らかなエネルギーで俺を護ってくれているようだ。
君の故郷(くに)はミラノだったか…
懐かしくはあるよ、イタリアの太陽や風の匂い、街を歩けば鼻をくすぐるオリーブオイルとトマトの合わさった匂い、遠足で行った郊外で嗅いだ小麦畑の乾いた香ばしいような匂い・・・
仕事で訪れるたびに、イタリアに居ると無条件に気持ちが落ち着くのは何故か不思議に思っていた。
辛いこともあったが、まぎれもなくイタリアは俺の故郷なのだと今は素直に思える。
君に出逢って、惹かれたからかもしれないな。」

二人は城を出ると旧市街を景色を楽しみながら、聖ヴィート教会のランドマーク・フラデークの尖塔を目指してゆっくりと散策した。
ヨーロッパ随一の景勝地らしく、石畳の通りは人並みで溢れかえっている。
「バイオレット…元気にしてるかな?」
ぽつりともらすパオラに、トヤマは優しい眼差しを注ぐ。
「家族なんだな… 気になるか、、、
公演前から預けているのだろう。無理も無いな・・・
パオラがバイオレットの話をすると家族の暖かさが分かるような気がするよ。」
トヤマは照れ臭そうに言うとパオラのブロンドに手を触れたーー

トヤマとパオラが尖塔を目指して歩いている頃ーーー
ミュンヘンではアッカーマン夫人が、自宅の居間を落ち着きなく歩き回る姿があった。

「ルカ… バイオレット大丈夫かな?

あんなに苦しんでるのに、まだ一匹も産まれないなんて…
獣医さんに連絡した方がいいかしら?」

夫人がぎゃーっと鳴く声の方向を向くと、バイオレットがルカとの愛の結晶をようやく一匹産み落として愛おしげに羊水に覆われた仔を舐めている姿が目に入ったーーー
「バイオレット…頑張って、、。」

夫人のブルーがかった瞳から自然と涙が溢れかえった。
ルカが夫人の足元にやってくる。
「ルカ・・・
パパになったのね… 」
ひざまずいて幸運のしるしと謂われるジャパニーズボブテールーールカの小さなポンポンのような丸く短い尻尾を撫でる夫人の涙で濡れた頬を、【パパになったばかりのルカ】の柔らかい舌が撫でた。

*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

仕事に行くカン・マエを送り出したルミは、パンツのポケットに入れていた携帯がバイブで震えたのに気づいた。

「なんだろ?ドイツでわざわざメールを寄越す人なんて先生しかいないのに。
先生は今、出てったばかりよね。」

着信メールを見るルミの大きな瞳が見開かれ、ポタポタと大粒の滴(しずく)がルミの頬を流れていく・・・
「先生の、、、、天邪鬼。

優しいくせに、、、、」

【ミュンヘンからの帰りのチケットをキャンセルした。
私と一緒にアメリカに来い。
このまえ次はアメリカツアーだと教えたら、〈親友がアメリカにいる、アメリカなんて行けないから、暫くはメールか電話でしか連絡が取れない〉と言っていただろう。
親友に会いに行かせてやる。
言っておくが、お前の親友に会いたい気持ちを尊重したまでの事で、断じて私の意向から決めた事ではない。
ツアースケジュールがアメリカだから丁度タイミングが良かっただけの事だ。
大学は通信制に変えたのだったな?なら何の支障も無いはずだ。
それから…荷物は最小限にしろ。
ミュンヘンの家に、どうしても必要なもの以外は置いていけ。
あの汚い、お前がトーベンの散歩に行く時に履いているスニーカーもだ。
帰国する前に新しく買ってやる。
以上だ、今日は仕事関係の会食があるから遅くなる。玄関の鍵をしめるのを忘れるなよ、お前は無用心すぎる。】

携帯が再び震えるーーー

【決定事項だから断る事は許さない。
もし断るのなら、私が納得する理由を簡潔に述べてみろ。
お前には無理だろうが… 】

「先生の、、、馬鹿、、」
ルミは手のひらでごしごしと目尻をこすり、偏屈な恋人の貌を思い浮かべながら返信を打ち始めたーーー




尖塔の最上階から眺める、街を見下ろす景色はトヤマが話した、中世の時代から時間が止まったようなメルヘンティックなものだった。
「ヒデ、ありがとう・・・

貴方と観た、この景色私一生忘れない。」
「大袈裟な言い方だな・・・
君が望むなら、俺は君の生きたい所すべて喜んで連れて行くよ。」

トヤマは僅かな迷いを感じさせる間のあと、再び口を開く。
「俺は……生きている限り、ずっと君と一緒に青空を見上げて微笑み合いたい。
君に寄り添って音楽を奏でたい。
いつも傍らにいて君を感じたい。
一緒に喜びを分かち合いたい。

君が望むなら、、、、、」

トヤマの屈託ない笑顔の裡に、覚悟を決めた男の決意がのぞいていた。

「おじさんの癖に、、、ヒデ最高!」
抱きつくバオラの携帯が鳴るーーー
メールを見るパオラの顔色が、みるみるうちに褪めていった・・・
黙り込む数秒…パオラとトヤマの全身に冷たい風が吹きすぎた。
「どうした…どうしたんだ?」
パオラは瞬きを繰り返し、定まらぬ視線を宙に泳がせている。
「ヒデ、、、どうしよう。ねぇ、、

どうしたらいいの!」

上空には何時の間にか暑い雲が垂れ込め、ぽつぽつと降り出した雨が二人を濡らし始めていたーーー




Little lovers(Final)につづきます。
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~ Comment ~

お伽の国と恋人

お伽の国のお城でのトヤマ&パオラが
しっくりきますね。 よりロマンチックな気分になりますね。羨ましいな(笑)
バイオレットの出産、私もドキドキ、ハラハラしてしまいました。夫人のように マグロを撫でながら うるっとしてましたよ。 次回はルカのJrに会えるんですね、楽しみです。
チップさん お疲れ様でした。

Re: お伽の国と恋人

> お伽の国のお城でのトヤマ&パオラが
> しっくりきますね。 よりロマンチックな気分になりますね。羨ましいな(笑)

美男美女ですからね~(^-^)/
コテコテのラブストーリーだし。書いていて恥ずかしくもなりますが(大汗)
> バイオレットの出産、私もドキドキ、ハラハラしてしまいました。夫人のように マグロを撫でながら うるっとしてましたよ。 次回はルカのJrに会えるんですね、楽しみです。

コメントのお返事が遅くなりました。申し訳ありません(^^;;
もうJrには会えましたよね?
チビルカ…性格も仕草もパパそっくりですよ。
想像してみてくださいね!
管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

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