スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←ご挨拶 →チェスキー・クロムロフ~世界一美しい街並み
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  • 【ご挨拶】へ
  • 【チェスキー・クロムロフ~世界一美しい街並み】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

韓流ドラマベートーベンウイルスSS

Little lovers(12)

 ←ご挨拶 →チェスキー・クロムロフ~世界一美しい街並み
「先生!荷物が届いてるの。
先生宛てだから後で見てね。」

帰宅したカン・マエのトレンチコートと鞄を受け取り、彼の顔を見てふわっと白い頬を綻ばせた恋人に彼は頷きだけでかえし、彼女の華奢な背中に片頬を苦笑の形にゆがめた。

ーーまったく…ルミときたら自分の容姿が人目を惹くのを、まるで自覚してないな・・・

ルミをランチに呼び出してから三日が経っていたーーー

秘書室に隣り合わせの応接室で待たせてあったルミを連れてランチに出掛ける俺に…というより連れていたルミの姿を見て、丁度お昼時 ランチに出掛けるためにフィルハーモニーの出口に向かっていた団員達は瞠目してしまって言葉をかける者は誰もいなかった。
恐る恐る"ボス"の顔の額縁あたりに目線を投げる勇者…例のネーナとザビーネはドアの隙間に隠れて、あからさまに顔を綻ばせて納得したように頷き合っていたが。
その代わり、珍しい物でも見るようにルミを背中越し、斜め向こうから興味津々な目付きを隠すでもなく見る団員の無遠慮な視線から守るように、つい彼女の肩を寄せてしまい、直ぐに彼女の身体を離した俺に、口をあんぐり開けて馬鹿面をさらしていた奴が何人もいた・・・

「先生ーーっ! シャワーが先?
夕食出来てるから、着替えてきてね~」
すっかり慣れてきた…キッチンで鍋を覗きながらのルミの声に我にかえると、カン・マエはクローゼットに足早に歩きだしたーーー





「マエストロ、、宜しかったら裏口を使われたらいかがですか?
若い団員たちが変な誤解をするとご迷惑でしょうから・・・」
秘書室の筆頭マレーネの遠慮がにじむ言葉に、カン・マエは口元の端をぎゅっと引き締め、目を伏せている傍らのルミに一瞬目線を遣ってからマエストロらしい重圧感のある声音で返した。
「こそこそする理由などない。
私が誰とランチに出掛けようが、彼らには関係ないだろう。
気遣いは感謝する。」
ルミを気遣い、さりげなく栗色の髪に大ぶりの手を触れ…そのまま下に下げた右手で肩を押して促す。
右手を軽く曲げ、左手に使い込んだブラウンの鞄を持ち、姿勢のよい特徴的な大またで歩きだしたカン・マエの背中を見て、マレーネに一礼すると慌てて彼を小走りに追いかけるルミの姿をマレーネは微笑みながら見送ったーーー

「マレーネさん!マエストロお出かけになりました?」
訊ねたのはまだ22歳、新入りのアニカである。
「ええ、堂々と正面突破でね。
いつもに増しての厳しいお顔だったわよ、、ふふふ。」
「綺麗な人でしたね~
マエストロと同国人かな?」
若い娘らしく好奇心が顔に書いてあるアニカを軽く睨んだチーフに、新人は肩をすくめる。
「噂話は秘書として失格よ!今後も一切許しません。
さ、仕事仕事‼」
マレーネは顔を引き締めて後輩に命じると、姿勢良く先に立って歩きだしたーーー




【私の騎士(ナイト)さんへ

あ~疲れた!
今日のリハーサルも相変わらずのピリピリムード。
ヘンデルの協奏曲ってあんなに長かったっけ?
十三分が永遠に感じてしまったわ。
カデンツァを演ってるときは、緊張感で心臓が口から飛び出しそうになっちゃう。
マエストロ・カンがタクトを完全におろして私の音を全身で一音漏らさず聴いてるのが、見てなくても伝わってくるの。
まだ、この前のアダージェットの方がマシだったわね(苦笑)
でも第三楽章で、滑らかに私のハープの音に寄り添うオケの音は優しくて、マエストロとミュンヘンフィルの演奏家達と一緒に演れる幸せを毎回、新鮮に感じているの。
ヒデも同じ?
明日はヒデもミュンヘンに戻って来るのよね。
逢いたいな~でも公演が終わるまではデートは我慢我慢!
明日からのリハーサルで貴方の顔が見られるだけで幸せよ。
ドキドキしてミスをしないように気をつけなきゃ。

ヒデ…音楽ってこんなに楽しいものだったのね。
教えてくれたのは、他ならぬマエストロ・カン。こんなに前向きな自分にしてくれたのはヒデ…貴方よ。
ありがとう・・・

愛してる。

貴方のパオラより。】

メールを打つパオラにアッカーマン夫人は微笑み、斜め向こうの床にしいてある大ぶりのクッションの上てあくびをしたバイオレットに話しかける。
「バイオレット、ママは最近幸せそうね~
親子揃って羨ましいこと… 」

「おばさま…なんか言いました?
済みません!聞いてませんでした。」
「違うわよ!バイオレットに言ってたの。
ママは最近幸せそうねって。」
瞬く間に顔を真っ赤にしたパオラに、夫人はにやりと笑い、大袈裟な声音で付け足す。
「パオラも28歳にして 恋多き人生から脱出かしら?
もしかして~ 運命の人との出会いがあったとか?」
「もうーーっ、イヤですよーっ、
そんなこと無いですから!
私にはハープが恋人なんですぅ~」

碧い瞳を煌かせて応えたパオラは、フィルハーモニーでのリハーサルを終えて、"愛娘"の顔を見にアッカーマン夫人の自宅に来たところである。
ーー恋をしている女性…ってバレバレの顔付きをしてるわよ・・・
つい破顔してしまった夫人を訝しげにパオラは見る。
「貴方を瞬く間に、こんなに可愛らしくほんわりとした雰囲気にした魔法使いさんの顔を見てみたいわね。
公演が控えていて苛々しても不思議のない時期なのに恋のチカラって偉大ね。タクトを執るのはマエストロ・カンでしょ?
知り合いの演奏家なんか厳しい指導に耐えかねて、公演前は毎日泣いてたわよ。不思議だわーっ、、、」

【僕の大切なパオラへ

そうか…大変だったね。
ソリストというのはマエストロの全幅の信頼を受けて、裏切る事なく力を尽くさなければならない。
常にマエストロと共に音楽を作り上げている演奏家たちをも、裏切る事は許されない孤独な仕事だ。
だからこそ、やり果せた時の達成感は格別、他のポジションにいる演奏家とは桁違いに大きくて歓びも深いものだよ。
頑張れ!君なら出来る。

明日には君の顔が見られるんだな…
同じミュンヘンの空の下で君と僕、同じ目標を見ていると思うと、何だか身体にエネルギーが湧いてくるような気がするよ。

そういえば、君にはまだ言っていなかったかな?
僕は、この前から考えていた事を公演が終わったら実行に移すつもりだ。
きっと君は喜んでくれると思う。
この話もご褒美になるかな?むしろ僕の方が楽しみで頑張れそうだ。

身体は遥か遠く離れていても、僕の心はいつも君の居る場所にある。
君の心が揺れる時、僕の心臓も痛みを感じている。

君を抱きしめたい…ブロンドの髪を触りたい、なだらかな線を描く美しい首すじにたくさんキスをしたい。

僕を呼ぶ声を、耳元で聴きたい・・・

僕は駄目だな… いい年をしているのに、我慢が苦手なんだ。
子どもっぽいと笑わないでくれ。

君の騎士(ナイト)より】

ルカがパオラのひざに近づき、小首を持ち上げてゴールドがかった瞳で見つめた途端、パオラの携帯が着信を鳴らす。
「……ルカ、、、あなたって、、、

やっぱり魔力があるのね・・・」
メール画面を辿り、溜め息混じりにつぶやいたパオラに、ルカはお尻を向けてリラックスしきっている。
「そうよ、信じなさい。
八百万(やおよろず)の神様ぜーんぶ、私は信じてるの。
その中にルカみたいな『猫神様』も居るわけ。神様って割にはのんびりしていて間が抜けてるけどね……ふふっ。」
「猫神様か……ルカ!そのチカラをバイオレットの安産に貸して頂戴。
パパのチカラで赤ちゃんが元気に産まれて、バイオレットが安産になる様にしてね。」

ルカの艶やかな漆黒の背中を撫でていたパオラは、目をあげた。
「おばさま、、バイオレットの赤ちゃん、あと二週間ぐらいで産まれるんですよね。」

「忘れてたわ!今日ねルカの定期健診とバイオレットの経過を見てもらいに行ってきたの。
赤ちゃんもバイオレットも元気ですって。」
「公演が終わったら旅行する予定があるんです。
大事な時期ですよね…やっぱり、、、」
「大丈夫よ! パオラが張り付いてたからって、バイオレットになにをしてあげるわけでもないでしょ?
行ってらっしゃい。」
ルカは目を開けてピンと耳を立てると夫人の前を悠々と通り過ぎ、パオラのひざに乗ってくる。
「あらあら…大丈夫ってあなたも言ってるみたいね。
それともバイオレットと同じ碧い目の綺麗なお姉さんが好きなのかしら。やっぱりルカも男の子なのね~」

夫人は苦笑を漏らし、すっと立ち上がるとキッチンに向かいながら、
「パオラ、、夕食食べてく?
あなた痩せたわよ。魔法使いさんに心配されないように精のつくものを作ってあげるわね。」

「ありがとうございます、、、」

夫人の背中は暖かい雰囲気に溢れていた。
あの人が久しく感じて来なかった「家族の温もり」そのものだったーーー

迷い猫を家に置いていたーーとヒデはメールに書いていた。
誰かと一緒に居ることにヒデは他の人と違う、敏感さを持っている。
猫にしろ、人にしろ、執着する事に躊躇う人種なのだろうか?
「パオラ!じゃがいもの皮を剥いてくれる?」

考えてはいけないこと。ずっと戒めていた考えのループは、夫人の声に途切れた。
嫌な考えを振りきるようにかぶりをふり、務めて快活を装って立ち上がる。

誰にも他人に触られたくない、柔らかく脆い部分がある。
ヒデもそれを露呈するのは是とはしていないはずだ、私の前なら特に。
ーー私だって、、、本当の弱虫はひた隠しにして生きている。

「ねえパオラ…語るほどの夢や希望がなくても、人間ってそんなに不幸じゃないのよ。
平凡で当たり障りのない人生がじつは一番幸せ。
裏を返せば一番難しいの。
幸せをはかるものさしは、人生の時々で変わっていくものよ 。
今の自分が一番好き。と思えるように生きなさい。
まあ…貴方は幸せそうに見えるわよ、でも時たま 考えこむ目つきをするわね。
私の取り越し苦労よね?ごめんなさい。」

キッチンで二人並んで夕食の準備をしながら、さりげなく自分に向けられた問いかけにパオラはコクリと何かを飲み込むほどに動揺してしまった。

「おばさま…哀しい目をした人には何をしてあげたらいいのかしら?」
パオラの声のトーンが一段低くなっているのに気づいたアッカーマン夫人は眉根を微かに寄せ、彼女のテニス焼けした健康的な顔に懸念の色が過ぎった。
「今、お付き合いしてるひとの話?」

コクリと形良く尖った顎を引いたパオラをチラッと見て、夫人は目元を意識して緩ませた。

つぶやくような小声で訊ねたパオラの全身を、優しさに溢れた 声楽を嗜んだ人特有の深みのある声が包みこむ・・・
「簡単よ、同じ哀しみに溺れないこと。
大きなあったかい愛で包み込んであげるしかないわ。
『何かをしてあげている』という考えは捨てなさい。一時の気紛れならともかく、そういう風に考えていると長くは続かないわよ。
傷痕は治らないけれど、包み込まれた温もりはチカラを与えるものよ。
傷ついた事のある人は、人の気持ちがよく分かるらしいわ。
与えられるだけではなく、もっと深い情を相手に与えるチカラがあるのですって。今の貴方は感じているでしょ?
無類のない大きな深い愛で包まれているから、自然に心に刺さった棘が抜けていくのよ。

その人に逃げ場を残しておいてあげるのも大切なことね。
長年かけて、心の中に作った逃げ場には土足で踏み込んではいけないの。
優しいところと、突き放されているような冷徹さが同居してるから、付き合う方は大変よね。
そういう面倒臭い相手に惹かれてしまった運命だと思って諦めるしかないの。」

アッカーマン夫人はパオラに語り、庭にハーブを摘みに出て行った。




「おい、ルミ!」

夕食の皿を片付けている恋人の背中に、指揮者らしいよく通る声が届いた。
「先生ーーちょっと待って
片付けたら直ぐに行きますから。」

「そうか……直ぐに来ないなら送り返すぞ。
それでもいいなら、皿洗いを愉しむがいい。」

「えっーー先生、、、
送り返すって…さっき私が話した先生宛の荷物のこと?」

カン・マエは、慌ててタオルで手を拭きながら、足音も賑やかにやってきた恋人に顔を顰めてみせる。
「歩くときは足音は立てない、ドアは静かに閉めろと言ったのを忘れたのか?
まあいい… ギリギリセーフだ。
開けてみろ。」

箱の中には、
カン・マエがルミの為に仕立てさせた、ボルドーワインのような深みのある赤のワンピースとハイヒールが入っていたーーー

「留守にしてばかりだからな… 」

カン・マエは一言つぶやき、視線をテーブルの上のワイングラスの赤に向けた。

「一週間後の公演はソワレだからな。
これぐらいは着たほうがいい。
サイズはお前とブティックに行った時に測っただろう?ぴったりなはずだ。」

確かに前回ミュンヘンに来た時、ブティックに行った覚えはある。
ひどく丁寧に採寸をされたが、意味が分からないまま、彼が選んだ白い夏物のワンピースをプレゼントしてもらったーーー

「もしかして…先生私のためにわざわざ?
夢みたい…先生、、、」

「気に入ったか?
このドレスに似合う……」

カン・マエの唇に柔らかいルミの唇が押し当てられ、二人の唇は次第に熱を帯びていったーーー

「…ルミ、、、」

「先生、、、 」

呼ばれた声に…見上げる漆黒の瞳の強い光に、ルミの肩が震えた。
手を引かれ…弓なりにしなるほどに強い力で抱きしめられる。

「ベッドへ… 」
「あぁ… 」

己の裡に滾るものの熱さに耐えながら、カン・マエはルミを押し倒したのだったーーー



Little lovers(13)に続きます。

進行上、書いておかなければならない事がありまして、結局あまりお話を進められませんでした。
今回は公演シーンを書いて、次は…とプロットがあったのですが(汗)
読む方により、カン・ルミを主にお読みになっている方、ネコちゃんたちのその後に興味がある方など、色々な見方があると思います。
どの観点から見ましても、消化不良でイライラされているかも…と管理人はただ平伏するのみです。

"恋人たち"が三組…という多さの上、話を広げてしまっているので、時系列などを勘案するとするすると簡単に進められなくなっています。
次回からスピードアップ出来るよう頑張りますので、どうかご容赦いただけますようお願い申し上げます。
スポンサーサイト
  • 【ご挨拶】へ
  • 【チェスキー・クロムロフ~世界一美しい街並み】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ご挨拶】へ
  • 【チェスキー・クロムロフ~世界一美しい街並み】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。